最近、職場で起きるいじめに関してニュースで取り上げられることが増えています。職場といっても企業だけに限らず、教員同士のいじめが問題になったこともありました。
このようないじめによる被害がきっかけで心に傷を負っている労働者もいますが、もしも社内いじめ問題が発覚した場合、事業者としてはどのような対応を取った方が良いのでしょうか?今回は、社内いじめが発覚した際の対処法と弁護士保険で弁護士への相談費用を補償してもらえるかについてご紹介します。
社内いじめは会社の責任?
社内いじめが発覚した時、会社の責任になるのでしょうか?まずは、社内いじめが発覚した際にどうなるのかを解説していきます。
深刻ないじめ問題
社内いじめと聞くと、どのようないじめを想像しますか?すぐに思いつくのは、セクハラ・パワハラ・モラハラではないでしょうか?
セクハラは、相手が不快に感じる性的行動や言動のことです。相手が嫌がっているのにも関わらず、性的な発言を繰り返し、抵抗したら労働者に不利な状況に追い込むことです。体を触る、スリーサイズを聞く、「男のくせに」「女のくせに」など性別に関する発言も含まれます。
パワハラは、地位や経験に基づく上下関係の時に起こりやすいです。相手に危害を与える身体的攻撃、他の社員の前での屈辱的な言葉、人間関係の切り離しなどが含まれます。就業時間後に何度も業務連絡してきたり、休日に開催される社内イベントへの参加を強要したりする以外に、同僚からの無視なども該当します。
近年増えているモラハラは、精神的に追い詰めるような言動のことです。容姿、能力への否定、暴言や無視、誹謗中傷も含まれます。また、業務連絡をわざと知らせないなどの行為もモラハラに該当します。
責任を負うのは加害者だけではない
年代・性格・価値観が違う大人の間でもいじめは起こりやすく、実は表面化しにくいという特徴があります。誰かがいるところで大きな声を出して注意したり、無視などの態度を継続したりすることで周囲が異変に気付くこともあります。
しかし、その反面で周囲の目がないところで陰湿ないじめが繰り返されるケースもあり、長時間過ごす職場でのいじめが原因で精神疾患を発症するリスクも高まっているのです。過去の裁判では、これらの違法性について様々な事情や対応が考慮され、その限度が社会的相当性を超えたと判断された時に認められています。
会社としては、社員に不法行為が認められた場合、いじめ問題発覚後に適した対応がなかったことへの不法行為責任、いじめの加害者を使用するものとしての使用者責任、労働契約に伴う付随義務として追う職場環境の整備義務などを怠った債務不履行責任などが該当します。
会社が責任を負うのはどんな時?
会社は、このようないじめ問題が起こった際には責任を負わなければなりません。職場内でのいじめ問題を対応しきれなかった、誤った対応をしてしまった場合も責任追及のリスクがあります。もし、責任を負わないとすれば会社が職場環境の整備義務などをきちんと果たしていた、または果たしていたものの防げなかったという場合です。
解決する方法は?
社内で起こったいじめは、会社が間に入るだけで解決できる問題でしょうか?また、どのような方法なら解決できるのかを見ていきましょう。
原因・事実関係の把握
最初にいじめの原因や事実関係について双方から話を聞くなどして、内容を把握します。いじめや嫌がらせは個人的感情で行われていたのか、利害関係で行われていたのか、減給や人員削減などを狙って経営者や会社側が行っているかなどを追及しなければなりません。
職場環境の見直し
解決するには、加害者と被害者の意見だけでなく、職場環境そのものの見直しも求められます。長時間労働が当たり前ではないか、有給休暇の取得が困難、賃金が低いなど、労働条件や環境の悪さが社員のストレスになっていないか、従業員で労働条件に差があるなどのきっかけで発展したのかを見直します。
適切な処分を行う
会社はいじめが発覚したら、その内容に対して適切な処分をしなければなりません。しかし、就業規則や規定で従業員同士のトラブルを解決する内容が含まれていない場合、会社として適切な処分ができない可能性があります。他にも人事担当やコンプライアンス部署などがない場合、問題をより大きく深刻にしてしまうかもしれません。
弁護士に相談する
社内で起こったいじめに対しての処分として、加害者に退職を勧めることもあるでしょう。この話し合いでは、自分の意思で退職を決めて円満に収まったと思うかもしれません。
しかし、その後不当解雇として会社を訴える人もいます。いじめの次は不当解雇となれば、会社としてのダメージも大きいものでしょう。このようなトラブルを適正に対処するなら、事業者向けの弁護士保険への加入を検討してみるのもおすすめです。
社内いじめ対策として会社ができること
社内いじめが起こると職場の雰囲気が悪くなり、いじめの対象ではない従業員も不穏な感じを抱いてしまいます。さらに、生産性の低下によって優秀な人材が退職する可能性も考えられます。
社内いじめは、起こってしまう前に防ぐことで環境を整えると誰もが働きやすい環境になります。そこで、社内いじめ対策として会社ができることは何かを解説します。
会社の方針の明確化
社内いじめを未然に防ぐには、経営者が中心となって従業員に対して公平な態度を取り、従業員の人間性や人格を尊重することが求められます。積極的に取り組むことで、従業員個人の意識を高めていくことができ、いじめについての問題意識を常に意識させることができます。
懲戒規程を設ける
いじめが起こってしまった場合、会社としての規律がなければ最適な対応が取れません。そのため、いじめの加害者に対しての処分が記載されている懲戒規定の明記、就業規則や職場での服務規律の規定を明記するのも良いでしょう。規定を定めることで従業員に周知できるため、抑止効果が期待できます。
相談窓口を作る
いじめが起こった時、被害に遭っていることが相談できないと悩みを抱え続けたままになってしまいます。いじめを早期発見し、早めに対処するには、被害者が気軽に相談できる環境を設けなければなりません。
また、相談窓口などを開設し、従業員へ周知させることで安心して相談できる環境になります。もちろん相談者の個人情報保護、相談したことで解雇や異動などの不当な扱いを受けることはないこと、どのような内容でも相談できる旨を伝えることが大切です。相談していることが、加害者に知られないことも同時に周知させましょう。
弁護士保険に加入する
経営者側であっても従業員を雇っていれば、いつ自分にどのような問題が降りかかるかわかりません。さらに、いじめ問題の発展で会社が不利な状態になる可能性もないとは言い切れません。
そのような事態に備え予め、事業者向けの弁護士保険への加入を検討してみてください。毎月の保険料で弁護士費用が削減できるだけでなく、様々な法律トラブルに対応できます。弁護士保険への加入で事案が法律問題かどうかを判断してもらえるので、早期解決にも役立ちます。
弁護士保険に加入していじめ対策をしよう
残念ながら、大人になっても誰かをいじめる人がいます。そして、被害者なのに不当な扱いを受けたり、会社に相談しても解決してもらえなかったりすることもあります。
このようなケースをなくすためには、会社の規定に処分内容を記載し、従業員に周知させること、そして会社が積極的に環境整備に力を入れることです。少しでも社内いじめが起こらない環境にしていく必要があります。
しかし、加害者側から最終的に会社が訴えられる事態もあり、会社としても自分の身を守る術を持たなければなりません。そこでおすすめなのが、法人向けの弁護士保険「事業者のミカタ」です。
事業者のミカタは顧問弁護士を持たない事業者向けと、顧問弁護士がいる事業者向けがあり、会社で起こり得る問題に対してサポートする保険です。問題が起こる前に保険で備えておくと安心です。事業活動を継続する上で、社内いじめ以外にも様々な法的トラブルに遭遇するリスクはあるため、ぜひ事業者のミカタを活用しましょう。