日常生活において詐欺や損害賠償などのトラブルに巻き込まれた場合、心強い味方となってくれるのが弁護士です。しかし、弁護士費用が数十万円を超えることも珍しくありません。
そんな高額な弁護士費用を補償してくれるのが、弁護士保険です。弁護士費用の負担が減るということで魅力的に感じますが、保険を使用する機会はあるのでしょうか?今回は、保険を使用した事例を通して、弁護士保険は必要なのか、それとも不要なのかについて解説していきます。
そもそも弁護士保険とは?
トラブルが発生した際、弁護士に相談する費用を補償してくれる保険を弁護士保険と言います。個人間で発生したトラブルに対応しているタイプや、経営者や個人事業主に起こりやすい法的トラブルに備えた保険もあります。
まず初めに、弁護士保険の基本情報をご紹介します。弁護士保険の加入条件と補償してくれる範囲を把握しておきましょう。
加入するための条件
弁護士保険に加入するためにクリアしなければならない条件は、下記の3つです。
・責任開始日に満18歳以上であること
・責任開始日に日本国内に在住していること
・日本語で約款・重要事項説明・その他書類を正しく理解できること
基本的な加入条件はこの3つですが、保険会社によっては異なる決まりを定めていることもあります。保険加入を検討している場合には、あらかじめ保険会社に条件を確認しましょう。
補償してもらえる範囲
弁護士保険では、偶発事故と一般事件を補償しています。
・偶発事故
偶発事故とは偶然に発生した事故を指し、自動車・自転車事故や火災、物損事故などが挙げられます。さらに具体的な例として、上部からの落下部による怪我や上の階からの水漏れなどがあります。
・一般事件
一般事件とは偶然に起きた事故以外を指し、欠陥住宅や相続問題、近隣トラブルなどが挙げられます。具体的には詐欺やいじめ、パワハラ、セクハラなどが一般事件として扱われます。
弁護士保険では偶発事故と一般事件を共に補償していますが、どちらに当てはまるかによって費用の補償割合は異なります。一般的には偶発事故の方が割合を高めに設定されており、中には全額補償となるケースもあります。一方で一般事件の場合には、低い割合となっているため、弁護士費用の一部が補償される程度だと覚えておきましょう。
対象外となるケースも
弁護士保険に加入しても、下記のようなケースでは補償対象外となります。
・有価証券投資に関連するトラブル
・刑事事件、少年事件
・被保険者側が原因のトラブル(暴力や脅迫、詐欺など)
・国や行政庁などが相手の法律事件
このようなトラブル・事件は特殊な手続きが必要になり、被保険者側が原因のトラブルであることが多いため保険の対象外としています。また、補償されるのはあくまでも被保険者の弁護士費用のみであり、家族や職場で発生したトラブルは対象外となるので要注意です。
企業が抱えている法的な課題
企業が運営を続ける中で、法的トラブルが発生するのは珍しくありません。続いては、企業で発生・遭遇しやすい法的トラブルをいくつかご紹介しましょう。
代金の未払い
創業したばかりの会社が遭遇しやすいのが、代金の未払いトラブルです。創業したての会社は信頼度が低いこともあり、取引先に甘く見られて代金の支払いがされないケースが存在します。
しかし、トラブル解決の手続きをしている時間はないからと代金の受け取りを諦めてしまう会社は少なくありません。代金の未払いトラブルを発生させないためにも、契約の時点からしっかり確認しましょう。
退職や解雇
退職や解雇に関するトラブルも、企業が抱えている法的課題です。従業員側に過失があって解雇にした場合でも相手側から訴訟を起こされ、話し合いが長引いてしまうことがあります。
また、退職勧奨により自ら退職した場合でも、不当解雇だとして従業員が訴訟を起こすケースも少なくありません。退職や解雇に関するトラブルは、企業のイメージダウンにつながってしまうため、できれば発生させたくないところです。
パワハラやセクハラ
どのような業種・会社規模であっても起こりうるのが、パワハラやセクハラ問題です。たとえ従業員同士によるパワハラやセクハラだったとしても、企業側の責任問題だとして訴訟されるケースは珍しくありません。
残業代
従業員が退職後、在籍時に支払われなかった残業代を求める訴訟を起こされることもあります。従業員がサービス残業をした事実がなく、残業した分についてきちんと支払いがされているのであれば、支払いの必要はありません。
ただし、企業側に不満を抱えている従業員が憂さ晴らしのために残業代を請求しているケースもあります。みなし残業代制度がきちんと法律に準じているかどうかが大切になってくる事案のため、弁護士や法律専門家のサポートが必須です。
必要となった事例について
最後に、弁護士保険が必要となった事例についてご紹介します。それぞれのトラブルを弁護士がどのように解決し、どのくらいの費用が補償されたのかチェックしていきましょう。
テナントが賃料を支払ってくれない
賃料の支払いを拒否するテナントに対して催促をするため、弁護士に内容証明郵便の作成を依頼した事例です。不動産賃貸サービス企業では、物件を借りているテナントや家主が賃料支払いを渋り、滞納が続いてしまうことは多いです。
しかし、そのまま放っておくわけにもいかず、弁護士へと相談することになりました。内容証明郵便の作成や相談による費用は、本来であれば9万円ほどかかります。しかし、弁護士保険へ加入していたことで保険金が支払われ、実質の負担額は15,000円のみとなったのです。
取引先の費用を支払ってくれない
代金を支払わない取引先に弁護士が示談交渉をし、支払い請求をした事例です。取引先が依頼した契約内容通りに業務を完了したにもかかわらず、小さなことに難点をつけて代金支払いを拒み続けていました。
弁護士に示談交渉をお願いする場合、通常は60万円の費用が必要となります。しかし、弁護士保険を使用することで約43万円の保険金が受け取れ、負担額は約16万円程度となりました。
ネットでの風評被害を受けた
インターネット上で事実とは異なる口コミが掲載されたことで風評被害に合い、相手側に損害賠償を求めた事例もあります。たとえ事実でなくてもインターネット上に悪い情報が拡散されてしまうと、それが本当かのように感じる方は少なくありません。
企業側は風評被害を発生させる口コミを書いたユーザーを特定し、損害賠償訴訟を提起しました。企業は損害賠償訴訟に関する弁護士費用43万円が必要となりましたが、弁護士保険からの保険金により、約11万円のみの負担となりました。
従業員から訴えられてしまった
上司からセクハラを受けた従業員が企業に対し、慰謝料の損害賠償請求訴訟を起こした事例です。パワハラや残業代未払いなどが原因で、従業員から民事訴訟で訴えられる事例は多く、その中でも多いのがセクハラです。
民事訴訟に関するこの事例の場合、弁護士に支払わなければならない費用は28万円ほどです。しかし、弁護士保険を利用すれば約20万円の保険金が受け取れ、最終的な弁護士費用の負担額は約7万円となりました。
弁護士保険は不要ではない!
企業がビジネスを展開する中で、法的トラブルは多く発生します。たとえ従業員同士のトラブルであったとしても企業が訴えられるケースはあり、訴訟が長引けば経営問題にも関わります。
そのようなリスクを避けるためにも、弁護士保険に加入しトラブルを未然に防ぐ対策をしておくのがおすすめです。しかし、たくさんの弁護士保険が存在しているため、どれが良いのかと悩んでしまうことはあるでしょう。
どれにしようかと悩んだら、弁護士費用保険の事業者のミカタまでご相談ください。お手頃な保険料で、大切な企業をトラブルから守ってくれます。